ヨルシカ 「盗作」 レビュー Yorushika “Plagiarism” Review

はい、こんにちは。

どどりです。

今日はお休みですので、というより休みにしましたので、ヨルシカさんの新しいアルバム「盗作」についてのレビューを書いて行こうと思います。

これは楽天さんで注文したらついてきたブックカバーです。
どどり
どどり

ヨルシカのレビューはアルバム「エルマ」は書ききれましたが、「僕は…」の方は中途半端になっているので、この「盗作」は頑張って書ききれればなあと意気込んでます。夜中には書ききれるかなあ、今ちょうど3時のおやつ前です。さっきまで読んでいたので。

ということで、いきましょう。

ちなみに、以前の「エルマ」レビューはこちら。

ヨルシカ 「エルマ」 レビュー ⅰ

「盗作」レビュー

はい、今回の初回限定版は「本」になってましたね。かなり厚いです。

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もともとリリース前から今回は特に物語というか、読み物的な側面がある旨の動画もありましたので、心の準備をリスナーのみなさんはしていたと思います。

ということで、僕はまず楽曲ではなく、小説部分から読んでいきました。小説部分もかなり文章があり、何ページでしょうか、えっと38ページから167ページぐらいでしたから、約130ページぐらいですね。130ページという文章だったら、文庫本の小説ぐらいの分量ですね。

さて、通常のレビューはこの「盗作」という作品を読んで各々が感じたことを書いて、あと分析して、解釈をしてということをしますが、前回の「エルマ」のレビューのように、たくさん脱線をしながら、物語と楽曲をつらつらと見ていきましょう。

どどり
どどり

重要なネタバレは極力しないように努力をします。ただ、イイタイことは流れるように書いて行きます。

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まとめる前に、まずは読後感想。

主人公が「男」なんですけど、男の言葉、イイタイことを言っているところが、なんだか思いが詰まっているような気がして、ところどころで著者がイイタイことを代弁しているのかなと感じるところが多かった。確かに作品にとって、作品の周辺とか作者の生い立ちとかはノイズなのかもしれないけれど、作品を作っている人は気持ちを持って書いているから、やはりそこは受け取り手としては感じました。

当初、「盗作」という作品名からして、ドロドロしたストーリーを想像していましたが、そうではなく、ひどく大きな出来事はないのだけれど、「心が満たされないなにか」というものに対して登場人物が向き合っているような印象が残った。重苦しい空気はなく、悲壮感もない。けれど、ああ人の心情を書いているなと分かるようでした。

全体はこんな感じでいいでしょうかね。

「盗作」の曲を聞く順番について

小説を読み返して、歌詞もみながら考えましたが、僕の個人的な感覚でいうと、

1曲目「音楽泥棒の自白」~ 11曲目「逃亡」

の流れで完結してます。男の望む「終わり」へと進むストーリーとなってます。

前半の「春ひさぎ」のこのアルバムでの位置づけがよく決めきれませんが、「昼鷺」からの「春ひさぎ」のところで、ちょっと重めな印象を与えるような感じです。でも、8、9、10曲目の順番はこの通りでいいかなと思います。そして、小説の終わりとして、「思想犯」で終わって大丈夫かなと。すっきりとした終わりでなくて、この作品ではいいかなと思いました。

と思ってましたが、11曲目です。「逃亡」。この楽曲が実は物語の一旦の終わりかなと思います。また後程書きます。

そして、

12曲目「幼年期、思い出の中」~ 14曲目「花に亡霊」

この流れは、小説内の途中で語られてますが、男とその妻の過去回想部分として考えたら綺麗だなあと思います。

こんな言い方でいいか分かりませんが、RPGとかでストーリーに沿ったエンディングがまずは準備されていて、それをクリアしていったんは満足をしますが、その後、真のエンディングというかトゥルーエンドとかが準備されているゲームがあり、それに近いかなと思いました。つまり、本来なら11曲目の「逃亡」で終わっていたんだけれど、この過去回想は途中で通り過ぎるのではなく、綺麗なエンディングとして準備されていると受け取った方が、なんか僕はいいなあと思いました。

なので、お好みの人は、一周小説を読んだ後に、P135からP143の”語りパート”を楽曲を聴きながらゆっくり読み歩いたらいいかなと思います。「花に亡霊」で、すっときれいに終わる気がします。

楽曲について

音楽泥棒の自白

1曲目から、不穏なインスト曲(?)ですね。ピアノが鳴っている以外でも、他に効果音が入ってます。この効果音というものが、ガラスが割れる音、カセットテープの音、カラカラと鳴る金属音などです。ガラスが割れる音は分かりますけど、金属音はなにを表しているのでしょうか。なんだろうかなと考えていると、1曲が終わります。

ピアノは物語の中、そして、特典でもついていた「月光」の曲の一部が流れてます。物語を通じて、このベートーヴェンの「月光」という楽曲が重要な意味合いも持ってます。

昼鳶 (昼鷺

スラッブの金属音から始まった曲ですが、やや暗めが、カッコよさがあります。ところどころ、効果的な意味合いで舌打ちが入ります。サビのギターも厚い音が出てるなあ。

さて、昼鷺という言葉はこの小説では昼間に動く詐欺ということで語られてました。ですが、どどりはちょっとぐぐってみたところ、

「詐欺(さぎ)」 の由来と語源 – 由来メモ

まあ、ネットの記事ですが、どうも詐欺の由来は「因幡の白兎」の「さぎ」から来ているみたいですね。だから、「鷺≠詐欺」なんですね。まあ当て字なので言葉としてはオッケーだと思います。

ただ、小説ではうさぎのガラス細工が出てきてますので、なんらかの意味合いがあったんじゃないかなと思います。

はい、漢字が違ってました。「鳶」です。とんび、です。恥ずかしい。

さて、漢字を「鳶」として、再度調べてみます。

昼鳶(ひるとんび)の意味 – goo国語辞書

やはり、ちゃんと「空き巣」の意味がありましたね。

春ひさぎ

春ひさぎについては、アルバム発表後に出たすぐあとの動画でしたので、歌詞がなかなか生々しいということでTwitterとかで話題になりました。

そして、YOUTUBEで公式でこんな注釈があります。

春をひさぐ、は売春の隠語である。それは、ここでは「商売としての音楽」のメタファーとして機能する。 悲しいことだと思わないか。現実の売春よりもっと馬鹿らしい。俺たちは生活の為にプライドを削り、大衆に寄せてテーマを選び、ポップなメロディを模索する。綺麗に言語化されたわかりやすい作品を作る。音楽という形にアウトプットした自分自身を、こうして君たちに安売りしている。 俺はそれを春ひさぎと呼ぶ。

https://www.youtube.com/watch?v=F3cXxqgbx9Y

意味を知るとびっくりしますね。隠語として使われているにしてもなかなか受け取り側として。

ここでは、売春は「見せかけの愛を売る」のと「大衆ウケを狙った曲を売る」というところがポイントで、売り手である自分はそんなものホントは売りたくもないということ。小説の中での捉え方としたら、大衆が納得のいくようなものを作るために、過去の名作のコード、スケールなどを分からないように寛平に盗むというところでしょうか。

この注釈を見る前まではよく分かってませんでしたが、ちょっぴり理解しました。

なお、男にとって、音楽の盗作はお金稼ぎのためではないです。

ある意味、次の曲につながるような気もしますね。

爆弾魔

爆弾魔は再録のものが収録されてます。

これが前のです。

そして、こちらが再録ですが、とてもエモかったのでツイートしてます。

この再録の「爆弾魔」ですが、ピアノが増え、ギターの音色が変わり、ギターソロが若干変わってますが、特にエモいと思ったのはボーカルsuisさんの歌い方ですね。特に、

辛くてもいい 苦しさも全部僕のものだ

わかってるんだ

ヨルシカ:「爆弾魔」

この「わかっているんだ」のところの歌声がとても良いです。ホントに良いです。

「爆弾魔」という楽曲はそれ自体でしっかりとした主張がある楽曲だとは思ってましたが、この「盗作」というアルバムの中にいることで、男の気持ちが歌に乗っていると感じられる。小説の中では妻に対してのこれほどまでの文章は明確に書かれてませんが、この「爆弾魔」で補完されていると捉えられればなあと思います。

青年期、空き巣

青年の時は空き巣をすることで生計を立てていた男。

その青年期が暗くなく、明るすぎることなく、軽快というか、不思議な感じで曲にしてあるように考えます。

あと、この歌詞ページは余白が多いなあという印象で、それもそれとて意味があるんだろうなと勝手に解釈してます。

レプリカント

これはかっこいい楽曲。どどりはこの曲好きです。ヤバイ。

そういえば、レプリカントとは?

https://okwave.jp/qa/q999261.html

造語らしく、人造人間という意味らしいですが、このアルバムではレプリカ(違法な偽造、模倣)を作る人のことを指していると考えてます。小説では模造品について、P134で触れてます。

歌詞のなかでは、ほとんどのものが偽物で、自分の心と言葉こそが本物ということを歌っている。ただ、自分の心、言葉によって、他のものを表現するけれど、表現したものは主観の域を超えることができないので、きっと偽物になってしまう。

小説では、模造品は、オリジナルの「本当の美しさ」を表現できないとしている。「本当の美しさ」が「空の青さ」なんだろうかなあ。

花人局

はい、この曲「花人局」ですが、先ほども書きましたが、どどりが勝手に最後の最後のエンディングと思ってます。(最初にアルバムと小説を聴き終えた後に、この曲が最後に来るような気がしたんですが、やっぱり違うかなと思ってます。)

さて、楽曲の歌詞でも出てきますが、美人局とは?

「美人局」の読み方と意味とは?語源や犯罪に遭わない対策も紹介 | TRANS.Biz

この曲の歌詞ですが、イイタイこと、伝えたいことは分かるんですが、どうも説明ができない気がします。どういったらいいのでしょうか。どどりの語彙はキャパオーバーです。ただ、この「花人局」は前作アルバム「エルマ」での「エイミー」だと思ってしまいます。なぜでしょう。

朱夏期、音楽泥棒

えっと朱夏とは?

朱夏

朱夏とは、「夏」を表すとともに働き盛りの時代という意味もあるらしいです。ということは、男は働き盛りの時期には、空き巣ではなくすでにある音楽を研究して盗作をする仕事をしていたということですね。

また、この曲は根本にあの曲があります。エリック・サティの曲です。

有名ですね。

小説の中でもエリックサティの話がちょこっとあります。

盗作

はい、つぎのアルバム名にもなり、テーマともなっている「盗作」についてです。

それはメロディかもしれない。装飾音かもしれない。詩かもしれない。コード、リズムトラック、楽器の編成や音の嗜好なのかもしれない。また、何も盗んでいないのかもしれない。この音楽達からそれを見つけるのもいい。糾弾することも許される。 客観的な事実だけなら、現代の音楽作品は一つ残らず全てが盗作だ。意図的か非意図的かなど心持ちでしかない。メロディのパターンもコード進行も、とうの昔に出尽くしている。

それでも、作品の価値は他者からの評価に依存しない。盗んだ、盗んでないなどはただの情報でしかない。本当の価値はそこにない。ただ一聴して、一見して美しいと思った感覚だけが、君の人生にとっての、その作品の価値を決める。 「盗作品」が作品足り得ないなど、誰が決めたのだろう。 俺は泥棒である。

https://www.youtube.com/watch?v=CS4f3jawFxY

この楽曲についてすぐ言えることは、歌詞が物語の文章といえるということ。歌詞自体に「。」を使っていること、口語として鍵括弧(「」)を使っていることからもその感じは見受けられる。

この曲の歌詞は、男が小説の中で話している内容がそのまま素直に出ているので、象徴的な意味合いがあるなあと思う。足りない、足りない、と男が感じている飢餓感というものが楽曲に乗せられてる。この楽曲の時といえるだろうか、目的の目の前といえるところで、高揚しているような気分が歌詞に入っていると僕は思います。

思想犯

これもカッコいい曲ですね。

さて、念のため意味を確認したところ、僕、この「思想犯」っていう意味を取り違えていましたよ。

思想犯(シソウハン)とは – コトバンク

なんで大げさに言っているかといいますと、この「国家体制」的な大きな意味合いでの犯罪というところがポイントで、それにぴったりとあうような曲名を持って来てたのが凄いなあと感動しました。おもいつきますか、普通。

そして、YOUTUBEの方の注釈もチェックしましょう。

思想犯というテーマは、ジョージ・オーウェルの小説「1984」からの盗用である。そして盗用であると公言したこの瞬間、盗用はオマージュに姿を変える。盗用とオマージュの境界線は曖昧に在るようで、実は何処にも存在しない。逆もまた然りである。オマージュは全て盗用になり得る危うさを持つ。 この楽曲の詩は尾崎放哉の俳句と、その晩年をオマージュしている。 それは、きっと盗用とも言える。

https://www.youtube.com/watch?v=ENcnYh79dUY

盗用もオマージュも、言葉があるだけで、実際の意味合いとしては同じであるということ。この小説全体を読んで、作品のオリジナリティ、模造品、盗用、オマージュといったことが一体何のためにあるのだろうか、区別が意味を持つのかっていうことを考えるようになりました。明確な違いがあるとはいえるのか、本質はみんな他のものの真似ではないかと。

うーん、なんだか難しい内容だなあと。

そして、この「思想犯」では男が熱望していたことが叶ったあとのことを表現していると考えられます。特にMVが分かりやすく表現されているなあと思います。

逃亡

1曲目「音楽泥棒の自白」から流れてきた物語の一旦の終わりの曲だと思います。

小説では男と少年の最後の別れで終わってますが、それだけではこの「逃亡」という楽曲がある意味が説明できなかったんです、ぼくは。

楽曲自体は、ジャズっぽくて静かなものに思えました。また、歌詞に「夜祭り」という言葉があったので、過去回想の方の曲かもしれないと思ってましたが、ちょっと違うなと思いました。

まずその理由として、

こうツイートしてますが、「逃亡」って犯罪の意味合いを含んでるなあと気づきました。そのため、「思想犯」で終わりではなく、この「逃亡」で終わりとなるかなあと。

つぎに、男は「思想犯」で表現されたことをやり遂げたあと、もうやることがなくなっているのは分かるけど、その後にどうなったのかなと考えていたところ、この「逃亡」で表現されている情景と男の行動を表しているのがまさに「逃亡」の歌詞。つまり、小説の後に続く物語がこの曲で補完されている。それだったらすんなり受け止めれるなあと。これまた勝手に僕が感じれたことですね。

ホント、主観です。あと、

幼年期、思い出の中

はい、ここからは最終エンディングに向かっているところの始まりです。男の幼年期については、小説の途中で書かれていましたが、妻との出会いのところがまさに幼年期として書かれているところと捉えてます。

しずかなピアノの曲です。歌は無しです。

夜行

夜行のMVですね。

僕、アルバムのネタバレになりそうで今までこのMVは一切、観てませんでした。そして、今回アルバムと小説を全部聞いて、読み終わったということで、満を持して観てみました。

もう納得ですよね。

実は、ちょっと前にこんなブログ記事を書きました。

ヨルシカ『花に亡霊』について

これはヨルシカの「花に亡霊」についての題名で記事を書きましたが、同じ映画の主題歌でのこの「夜行」にもいえることです。偏見のあった僕ですが、やっぱりヨルシカのアルバムの楽曲は、一貫したストーリーの中での楽曲であってほしい、というのがあって、”映画のために作られた”ということだったならば、違和感というか、魚の骨が喉に刺さったような違和感があるように思えて仕方がなかったんですね。それで思ってたことをつらつら記事にしてました。2020年の6月に書きなぐった記事でした。

でも、これではっきりしました。この「夜行」、そして「花に亡霊」は映画の主題歌に抜擢された曲ですが、映画のための曲ではないですね。この「盗作」というアルバムのための楽曲でした。

このMVの映像もです。なんで、女の子の方が背が高いのか、男の子の方が若いのか、そういうものも全て根底に「盗作」で描かれたストーリーがいるんですね。すべてそれに沿って作られていたんですね。なんだか、「よかったなあ」という安堵の気持ちです。僕は。

二人で歩いていくところは、男の気持ちを表現しての過去回想だとぐっときますね。

追加:補足ですが、『盗作』のインタビューでもこの2曲のことについて話があったみたいです。ご参考に。

https://sp.universal-music.co.jp/yorushika/tousaku/

花に亡霊

最後の締めの楽曲。エンディングです。「花に亡霊」。

MVは映画の映像で作られていますが、この「花に亡霊」は、小説の内容とか、過去回想のすべてをひっくるめて、包んでいるような感じがして、なんだか説明しづらいなあと思います。もうちょっとしっかりとした内容をかければいいんですけど、書けないなあと。曲がデカいんですよ、はい。

前に書いた記事を置いておきます。

最後に

長々とまとめてみました。

ああ、もう日は越してしまいました。

やっぱりじっくりと読んで、楽曲を聴いて、キーボードを叩いていると時間なんてあっという間に立ってしまいます。それもいいことなんですけどね。

また内容の修正をしようと思いますが、別の記事でもうちょっと書きたいことがありますんで、もうちょっとこの「盗作」を楽しみたいですね。

ほら、ウサギのガラス細工とか、妻の生まれ変わりの思想とか、まだまとめんといけないことがあるんです。

それでは。

どどり

【NEW】ヨルシカHPでインタビューの前編と後編が公開されました。

そちらをお口直しにご確認をしてください。

いろいろ書いてきた僕の記事と違うところもありますが、このブログ記事は変えません。

その方が書いたときの衝動が残って面白いと思いますので!

ヨルシカ アルバム「盗作」特設サイト

あと補足のレビュー、書きました。こちらもどうぞ。

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2020年8月1日 14:15 1回目加筆修正

2020年8月3日 23:07 2回目加筆修正

2020年8月5日 20:43 3回目加筆修正

2020年8月12日 9:26 4回目加筆修正+デザイン変更

2021年3月22日 1:25 5回目動画貼り付け